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まうまうっとねー。

まうまうっとねー。

兼好法師『徒然草』

兼好法師。私が学校で習ったときはまだ「吉田兼好」だった兼好法師。
僧侶になる前の名前は「卜部(うらべ)兼好」。卜部氏は代々、京都「吉田神社」の神職を務めていたんで「吉田兼好」と言われていた(らしい)んだけど、それはいくら何でも変だってんで、最近は「兼好法師」。以後お見知りおきを(うろ覚え・いいかげんだったんで、調べ直しました。汗)

さてこの兼好法師(長いので以下「兼好」。呼び捨てかい。)、
「お説教」「教訓」「ちょっといい話」が大好きだ。
読むときは、「んで何がいいたいんじゃい!」あるいは「余計なお世話じゃ!」と突っ込みを入れながら読むのが、たぶん正しい。(そうか?)

「つれづれなるままに、日暮らし、硯(すずり)に向かひて……」から始まる冒頭文以後、もう、兼好おじさん、パワー全開っす。
何をやっても裏目に出て小馬鹿にされる「きりくひの僧正」、
油断禁物「高名の木登り」、
不足の美が好きで何が悪い・風流の道は奥深いのじゃ「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」
などなどなど、枚挙にいとまなし。
おじさんおばさんになると、お説教楽しいやね。
心境わかるようになってきた自分が悲しい(笑)


さて取り上げまするは第211段。
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 よろづのことは、頼むべからず。
 愚かなる人は、深くものを頼む故に、恨み、怒ること、あり。

 勢いありとて、頼むべからず。強き(こわき)者、まづ滅ぶ。
 財(たから)多しとて、頼むべからず。時の間に失ひ易し。
 才ありとて、頼むべからず。孔子も時に合はず。
 徳ありとて、頼むべからず。顔回も不幸なりき。
 君の寵(ちょう)をも、頼むべからず。誅(ちゅう)を受くること速やかなり。
 奴(やっこ)、従へりとて、頼むべからず。背き走ることあり。
 人の志をも、頼むべからず。必ず変ず。
 約をも頼むべからず。信あること少なし。

 身をも人をも頼まざれば、是なる時は喜び、非なる時は恨みず。
 左右(さう)広ければ障(さわ)らず。前後遠ければふさがらず。
 狭き時は、ひしげ砕く。
 心を用ゐること少しきにして厳しき時は、ものに逆ひ、争ひて、破る。
 ゆるくして柔らかなる時は、一毛も損せず。
 
 人は天地の霊なり。天地は限るところなし。人の性、何ぞ異ならん。
 寛大にして窮まらざる時は、喜怒これに障らずして、もののために煩はず。  
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 「頼む」ってのは、お願いするんじゃなく、信じて頼りにするってこと。だからこの文章でいう「深く頼む」っていうのは、「(気持ちの上で)しがみつく」に近いかな。

 途中出てくる「孔子(こうし)」は、むか~しの中国の思想家(彼の講義?録『論語』が有名)。いろいろ思索はしたんだけど、ぴたっとくる君主に出会えなかったらしい。んで「時に合わず(時流に乗れなかった)」と。
「顔回(がんかい)」は、そんな孔子が一番弟子と思って将来を楽しみにしていた人。でも、若死にしちゃったのね。孔子、当然がっくり。なんで死んじゃったんだよ、どうして天は優れた者を生かしておかないのか、って。

兼好がここで言っているのは、よろづのこと=全てを信じるな、ってことではないのよね。
しがみつくな、と言われているものを見ると、
「権力者」「お金」「学才」「人徳」「上司」「部下」「人の心」「約束」。どれも、たよりないもの、はかないもの、すぐにかわってしまうもの。
そんで極めつけが「身」=自分自身、だ。信じられないのは、他人と同じ。
そりゃそうだ。

一見、「何も信じるな」って言ってるみたいだよね。この世は無常、不変なるものはないんだって。
でも、そっから先がある。

兼好は、

「どこまでも広がる天と地のように、心もどこまでもひろげてみようぜ~」

っていうわけよ。

「人も自然の一部だろ?」てね。

いろんなことにしがみついたり、過剰に期待したり、せっぱ詰まって焦ったり。そんなのは自分が傷つくだけで、なんにもならない。
心が狭いから、いろんなものにぶつかっちゃってすり減るんだよ、って。
だから、ゆるゆるとかまえて、うまくいったときは素直に喜べばいい。
だめでも恨まない。次行こ、次。
そんな感じ。

執着しすぎないこと。
欲張らないで、自分の手に余ることは思い切って手放すこと。
ほんとにむずかしいね。たとえいつも心がけていても。人間だからね。

だってさ~、さっきの孔子さんだって、「七十歳にしてようやく、どんなに心のままにふるまっても、限度を超えなくなった」って言ってるんよ?
凡人にゃあ、そう簡単に到達できないってば。

人は煩悩にまみれて生きてる。そんなこたあ兼好だって百も承知。
だから兼好だって、きっと、「目標」くらいな気持ちで書いたんだろうな。
俺もいつかはこうなるぞ! って。
「ちょう」と「ちゅう」の音のそろえ方なんかも、のって書いてる感じがするでしょ? なんか。
たぶん、楽しんでたんじゃないかなあ。半分は。
お説教大好きっぽいから (笑)

「余計なお世話じゃ!」と突っ込むのも、もちろんOKOK!
心寛いから、兼好。




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